イケナイのモノの魅力

今は亡き忌野清志郎と坂本龍一のコラボレーションの「い・け・な・いルージュマジック」と言う曲がある。1982年の資生堂のCMソングである。骨太で単純なコード進行のロックリフに坂本龍一の分厚いシンセサイザーのアレンジが乗っかる事で、単なるロックではない新しい音楽が(ニューウェーブに分類されるかもしれない)完成されていた。そしてその後、目にしたプロモーションビデオが当時としては衝撃的なもので、どぎついメイクと髪を逆立てた二人が万札をばらまきながら暴れ回る。ラストシーンでは手錠で繋がれた手を肩に回し二人がキスをする。まさに度肝を抜かれ、一瞬で彼らのファンになったことを今でも覚えている。清志郎は歌う「人の目を気にして生きるなんてくだらないことさ」そんなメッセージと裏腹に当時の僕は清志郎のファンであるってことを友達に堂々と話す事ができなかった。今思えばそれをカミングアウトすることで変なやつのレッテルを張られることを恐れたのだと思う。それくらいこのユニット、特に清志郎の存在は、異質で魅惑的であった。このような羞恥心を含んだ憧れを言葉として表現するなら「イケナイ」感というのはどうであろう。そして僕が次に出会った「イケナイ」に属するアーティストはプリンスである。私はまさにMTV世代であるが、当時地方の映りの悪い深夜帯のその番組でプリンスのライブビデオが取り上げられていた。おそらく「I WOULD DIE 4 U」であったと思う。上半身裸、どぎついスパンコールの紫の衣装、ステージセットを動き回り、腰をグラインドさせる露骨なセックスパフォーマンスをする黒人のシンガーがプリンスであった。そしてその躍動的なリズムやアクションと共に彼が発するファルセットのシャウトは耳についてはなれない。あからさまに下品で卑猥で露骨なセックスアピールパフォーマンスをするプリンスもまた清志郎以上に「イケナイ」感に満ち満ちていて、僕がその場ですぐ完全ノックアウトされたのは言うまでもない。とにかくプリンスは露骨に卑猥な表現をする。ただそれが楽曲と彼のシャウトで歌われることで表面的なラブソングにとどまらず、もっと切実で肉体的で心にぐっと訴えるものとなる。「The Beautiful ones」のクライマックスでプリンスは切実にこうシャウトする「Do you want to him? Do you want to me? I want you!」こんなに単純で臭い詞が彼のシャウトの魔法にかかると純粋で切実で情熱的なセリフに聴こえてしまう。それこそがプリンスの最大の魅力であると思う。「イケナイ」アーティストはあまりに異質で羞恥心を感じてしまうような存在、であるからこそ一度ハマると熱狂的に心を捕らえて離さない。僕にとってリアルタイムではないが、清志郎やプリンスのイケナイ感のルーツとなっているのアーティストがデビットボウイであろう。スタリンリーキューブリックの映画「2001年宇宙の旅」に影響を受けた彼はSFの匂いのする新しいスタイルを創出した。宇宙人ジギースターダストというキャラ設定で送り出した楽曲、ミュージカルのようなステージ、そして清志郎もプリンスも及ばないぶっ飛んだ衣装、メイク、ヘアスタイル。これだけ危ういものをブチ上げ、演じきり、興行的にもその時代に肯定させた彼はまさにレジェンドと呼ぶにふさわしい。徹底的に羞恥心を捨てた潔さが常人にはまねのできないボウイのかっこよさなんだとおもう。話が前後するがレディーガガも彼のチルドレンであろう絶対に。芸術家は少なからず作品を創る上で個人内面をさらけ出す。その内面や視点が異質であることが作品の個性を高める一面がある。しかしこのさらけ出すと言う行為そのものは常人にとって恥ずかしい行為そのものでないだろうか。羞恥心を如何に捨てるか、もしくは赤面するような想いを内包した作品を発表しても堂々としていられるだけの芸術的地位を確立してしまうかが、芸術家がより自由で解放された表現を行う為に到達せねばならない一つのテーマであろう。


MUの愛でる日々のホーム
ホーム  |  特定商取引法に基づく表記 |  プライバシーポリシー  |  返品について  |  送料 |  お問い合わせ
© UMAI MASAHARU 2013